もしも喜緑さんの一人称が"ボク"だったら…?などと妄言を吐いてた犬居ですが…
なんと!ボクっ娘の喜緑さんSSを拍手にて頂いてしまいました。ありがとうございます!
私が勝手に改行とかしちゃってます。ご本人さま、間違ってるところとかあればご指摘ください。

ボクっ娘喜緑さん想像SS

俺は妙に機嫌が良かった。
今日のハルヒは比較的大人しく、朝比奈さんは相変わらず可愛らしく、古泉はゲームがヘタ。なかなかいい一日だ。

そんな部活の帰り道、俺は長門に付き合って図書館に来た。
長門はあっちこっち見て回っている。俺もたまにはと本を読んでみたがダメ。ものすごく眠い。
そりゃもう、眠いってレベルじゃねぇぞ!だからお休み。重くなった瞼を閉じる。

・・・・・・

?「キョンくん」

ん?

?「キョンく〜ん」

ん?

誰かが俺を呼んでいる。長門か?ゆっくり目を開けると思ってもない人が座っていた。

?「あ、やっと起きてくれました」

喜緑さんだった。まさかこんな所で会うとは。

キョ「喜緑さんじゃないですか。こんな所で会うなんて奇遇ですね」

口にしてから思ったがそんなに意外ではないかもしれない。
長門程ではないだろうが、彼女も本が好きに見える。よく利用しているのかもしれない。

喜「そうですか?ボクよくここに来てるんですよ」

キョ「そうだったんですか」

喜「それに意外でも何でもないですよ。ボクはキョン君に用事があって会いに来たんですから」

え?俺に会いに来た。

キョ「はぁそうなんです・・・か」

ふと気づく
やけに静かだった。話し声はもちろん、足音さえ聞こえてこない。

キョ「え!喜緑さん今何時ですか」

まずい ずいぶんぐっすりしてしまったようだ。

喜「大丈夫ですよ。別に遅い時間ではありません」

キョ「とりあえず外に出ましょう」

出口に向かう。

おかしい、確かこの辺にドアがあったはずだ。見当たらないずっと壁だ。

喜「あぁドアならありませんよ。ボクが『閉鎖』しましたから」

今喜緑さんは何て言った?

俺は何か忘れてないか。ごく最近同じような経験していないか。
後ろの喜緑さんを振り返る。穏やかな笑顔だった。しかし、得体の知れない恐怖を感じた。

喜「もう解っていますね『此処』がどんな所か」

キョ「えぇ何となくは。ここまでする用事って何です?」

喜緑さんの姿が朝倉とダブる。

喜「はい、キョン君に死んでもらいたいんです」

キョ「はっは、ははっははっ」

我ながら乾いた笑いだと思う。今日は最悪の一日だ。

キョ「ははっ嫌だな、そんな悪い冗談ですよね」

喜「本当にそう思います?」

正直まったく思えない。息がしづらい。凍えそうな程空気が冷えている。

喜「ふふっすいませんキョン君、冗談ですよ」

え?冗談なのか。

キョ「本当、冗談ですか」

喜「えぇ冗談ですよ」

と喜緑さんは近くのイスに手をかけた。
座るのかと思っていたら、そのイスを真っ直ぐ俺に投げた。か弱そうな女の子が投げたとは思えない速さだった。

当たると思った瞬間イスが蹴り払われた。

キョ「長門!」

イスを蹴ったのは長門だった。

喜「やっと来てくれ ましたね」

長「プログラムに不自然な穴があった」

喜「えぇ長門さんの為に開けておきましたから」

長「喜緑江美里、この人間に手を出すのは得策ではない」

喜「ふふっふふふふ」

急に笑い始めた。
何かツボに はまる所でもあったのだろうか?

喜「そうでした。長門さんはまだ知らなかったんですね」

嫌な予感がする。 絶対俺にとって良くない話だ。

喜「こんな事をしているのはボクの考えではありません。『情報統合思念体』 の決定なんです」

待て、ちょっと待て、ラーメンが出来上がる位の時間でいいから待ってくれ!

喜「朝倉さん と同じです。キョン君を殺してどうなるか見るんです。ボク達は3年待ちました。
やっとキョン君が現れ少し 変化が見られたと思った。しかしボク達が求めるような情報は観測出来ていません。
今の所、そんな兆しも無い」

語る喜緑さんはどこか楽しそうにすら見えた。

喜「このままだと涼宮さんは高校を卒業して、大人に なります。
大人になってしまったら彼女も、『あぁ宇宙人や未来人なんてやっぱりいないんだな。
夢物語 は夢物語なんだな』と思う事でしょう。それでは情報が観測出来なくなります。困るんです」

俺は早くそうなってほしいよ。

喜「そこで考え出されたのがこれなんです。そしてボクが最初の刺客として来た。解って頂けましたか?」

つまり俺は宇宙規模のお尋ね者って事ですか・・・今日ほど今日がエイプリルーフルで あってほしいと思った事は無いな。

喜「長門さん、近頃の貴方の行動は少し変です。涼宮ハルヒを観察するのが役目のはずです。
しかしボクには別の人に目が行っている様に見えます」

長門は黙ったままだ。

喜「このままだと処分も検討しないといけません。そこで名誉挽回のチャンスをあげます」

すっと人差し指が長門に、 いや俺に向けられた。

喜「長門有希、貴方がキョン君を殺しなさい」

なっなんだって、俺が長門に・・・

長門を見る。長門は俺を見ていた。いつもと同じ無表情だ。
しかし、何かを決意した、そんな目をしていた。大丈夫だと心配ないと言ってくれているのだと思った。

喜「どうしました 長門さん、早くして下さい。早くしないとボクがやってしまいますよ」

長門が喜緑さんに駆け出した。

喜「やっぱり長門さんはこっちを選びましたか・・・」

長門の攻撃は激しく鬼気迫っていた。逆に喜緑さ は笑みさえ浮かべて、まったく余裕といった感じであしらっている。
あの長門が赤子のように・・・

喜「無駄です。長門さんではボクに敵いません」長「くっ」喜「黙ってキョン君が殺されるところを見てて下さい」

長「させない、私が守る」

喜「しょうがありません。ちょっとだけ本気を出しましょう」

そう言うや 否や。

ドヴァァァァンン!

爆音が辺りに響いた。ぐぅ耳が痛い、近くでジェット機でも飛んでいったような音がした。いや、そんな経験した事は無いが。

閉じていた目を開ける。

飛び込んできたのは本棚を巻き込んで 倒れている長門だった。さっきの音は長門が吹っ飛ばされた音なのかよ。

キョ「おい長門!」

駆け寄って本に埋もれていた長門を掘り起こす。血まみれだった。

キョ「大丈夫か!」

長「問題ない」

喜「長門さんったらムリしちゃって。そんな体でボクの相手はもう出来ません。
さて、邪魔者はいなくなりました。次はキョン君の番ですよ」

ジリジリと近づいてくる。逃げようと思うのだが体が動かせない。
朝倉の時とは違う、体が震えて動かせない。これがヘビに睨まれたカエルって事なんだろうな。

長「させない」

少し苦しそうに長門が立ち上がる。

喜「まだやるんですか?もう止めた方がいいと思いますけど」

痛々しい姿を見て喜緑さんの顔が曇った。

長門が俺に手招きする。

キョ「なんだ」

長「私が戦っている隙に逃げて」

辺りを見渡す。

キョ「そうしたいのは山々だが、逃げるって何処にだ?それにそんな体で無茶だ」

長「私は平気。今から彼女のプログラムに侵入して逃げ道を作る」

喜「無駄ですよ。ボクのプログラムは完璧です。ハッキングすら出来ません。ましてや戦いながらでは尚更です」

小さい声で喋ってたのに聞こえてたのかよ。

長「逃げて」

どうする。このままだと長門が、長門が死んじまう。

喜「これで終わりです」

喜緑さんが走ってくる。どうすれば。く・・・くそ、くそ、くそぉぉぉ!

キョ「うおおおお!」

長「!?」

長門の言う事に反して俺は喜緑さんに挑みかかっていた。
俺じゃ無理だろとか、狙われているの俺じゃなかったかとか、思ったりもしたが体が動くのを止められなかった。

喜「あら?」

俺が放った渾身のパンチはあっけなく空を切った。
そして喜緑さんのパンチが腹に入り壁に叩きつけられた。

いっ痛てぇ。

あんな小さい体のどこにこんな力があるんだよ。

喜「無謀ですよ。勇敢のなのはカッコイイですけど普通の人間が相手になるはずありません」

長門が寄ってくる。そんなに心配するな長門。心配してるか解らないけど。
見た目は間違いなくお前の方が痛そうだしな。

ん?待てよ。さっきの事で気づいた事があった。

キョ「喜緑さん聞きたい事があるんですが」

喜「はい、なんでしょう」

キョ「喜緑さんは今回の事どう思ってるんですか」

喜「今回の事と言いますと?」

キョ「長門と戦ったり、俺を殺そうとしたり、そんな事です」

喜「・・・・・・ボク達は情報統合思念体に造られた存在です」

キョ「それで」

喜「だから貴方達、人間みたいな感情はボク達にはありません」

キョ「貴方は人間じゃない。だから心なんて持ってないと」

喜「はいそうです」

これは俺にでも解る。

キョ「嘘ですね。そんなはずない」

喜「なんでですか」

キョ「俺は長門を見てきた。長門には間違いなく心がある。ついさっきだって、俺を助けてくれた。貴方達の命令に背いてまで!」

喜「・・・・・・それで心があったらどうだと言うんですか」

キョ「さっき言いました。この事どう思ってるんですか」

喜「別に何とも思っていません。命令されたらそれに従う、それだけの事です」

キョ「本当に、そうですか」

喜「何か、そうでない根拠でもあるんですか」

キョ「あります。喜緑さんは俺達を殺す事をためらっている!」

喜「なにを」

キョ「喜緑さんは明らかに長門より強かった。その気になれば長門はもう消えていたはずです。でもこうして生きている」

喜「そっそんな事ないです、キョン君の勘違いです!」

キョ「俺の事だってそうです。俺が眠っていた時に貴方は何もしませんでした。チャンスは いくらでもあったはずなのに。
さっきだって俺が殴りかかったとき、喜緑さんは俺の事殺さなかった。出来たはずなのにそうしなかった!」

喜緑さんは沈痛な顔をして黙っている。

喜「そ・・・そんな事、ないです」

むりやり搾り出したような声だった。

キョ「でも、喜緑さんだったら」なんで・・・。

長「なんで泣いてるの」

喜「えっ?あれ、そんな」

喜緑さんは言われて初めて頬を流れている涙に気づいた様だった。

喜「あの、違うんです。これはその」

涙を拭うのだが、拭っても拭っても涙は止まらなかった。
喜緑さんが泣いている音が部屋に静かに響いていた。・・・

喜「そうです。本当はこんな事したくないんです」

すっかり赤い目になった喜緑さんがゆっくり語りだした。

喜「突然、キョン君を殺せと言われました。やりたくなかった。でも命令ならしかたないんです」

キョ「なんでです。そんな命令聞く必要ないじゃないですか」

喜「しかたないんです。ボク達はそういう目的の為に造られた存在なんです。
キョン君のような人間とは違うんです・・・普通の女の子に生まれたかったな」

声を上げて泣き出してしまう。

キョ「あの、こんな事、俺が言うのもなんだけど。喜緑さんはとても素敵な女の子ですよ」

喜「えっ?」

キョ「普通の人と同じです。少なくとも俺にはそうしか見えません」

喜「・・・」

うっ恥ずかしい。こんな事言うの絶対俺のキャラじゃないよな。

喜「ふっふふ。ふふふ、キョン君はお世辞が巧い人だったんですね」

キョ「俺は正直者なんです。思った事しか言いません」

喜「そうですか、ありがとうキョン君」

喜緑さんはさっきと、打って変わって晴れやかな笑顔になった。

喜「今日はごめんなさいね。もう襲ったりはしないから安心して」

めちゃくちゃになっていた部屋が元の図書室に戻っていく。ふぅ助かったのか俺。

キョ「あ、でも他の奴が襲ってくるかもしれないのか」

喜「それならボクに任せてもらえませんか。何とかしてみます」

キョ「出来るんですか、そんな事」

喜「多分出来ます。今回の事は急進派の意見に半ばそそのかされただけなんです。
ほとぼりも醒めた頃だと思いますし、少なくとも卒業までは待ってくれるはずです」

キョ「ありがとう 喜緑さん」

さっきまで命を狙っていた人に感謝するってのも不思議な話だ。

キョ「でも、もし聞いてくれなかったら」

一生お尋ね者に。

長「大丈夫。その時は私が守る」

キョ「長門・・・」

喜「今度はボクもキョン君の事、助けに行きますから」

この二人が守ってくれるなら、どんな奴が来ようと安心だ。

キョ「それじゃ、帰りましょうか」


図書館の外にでる。
そんなに時間が経っていないはずなのにやけに懐かしく感じる。なんだか空気も美味い。

喜「それじゃあ一緒に帰りましょうか、有希ちゃん」

はい?有希ちゃん?

喜「ふふっ有希ちゃんはボクの妹みたいなものです。だから妹らしい呼び方にしようって今決めたんです」

これから変わっていく彼女の最初の一歩。そんな感じなんだろう。

キョ「それじゃあ、長門、喜緑さん」

一緒に歩いていく二人の背中を少し見つめてから、家路を急いだ。


喜緑視点−

隣を有希ちゃんが歩いている。今日は悪い事しちゃったなぁ。
傷自体は治してあげたから もう無いのだけど。

喜「有希ちゃん、ごめんね。痛かったでしょ」

長「問題ない」

喜「そう、ありがとう」

二人で帰り道を歩いている。
言われた事を実行していたら、ボクはこの道を一人で歩いていたんだろうな。
それはとても寂しい事に思えた。今思えば、『あの時』感じた気持ちはこういうものだった。
有希ちゃんはどうだったのだろうか。これを聞くのは少し残酷な事なのかもしれない。

喜「あのね、有希ちゃん」

でもボクは口を開いていた。

喜「一つ聞いてもいいかな?」

何も答えなかった時は言うのは止めよう。

長「・・・何」

う〜ん、答えちゃったか。しょうがない。意を決した。

喜「今更なんだけど、朝倉さんがいなくなったこと、どう思ってる?」

有希ちゃんは黙々と歩いている。
多分、聞いても何も答えてくれないだろうなと思っていたから、ボクも何も言わずに歩いた。

家の近くまで来た時だった、

長「・・・悲しい」

そう言ったのは。

喜「えっ・・・」

彼女はそれ以上何も言わなかった。

喜「・・・そう」

何故か知らないけど、そうしたくて、有希ちゃんの手をギュッと握って帰った。
小さくてあたたかい手だった。

喜緑視点、終−


正直、寝不足だった。
助けに来てくれると言ってくれたものの、襲われるのではないかと思うと眠る気にはなれん。
学校の入り口で長門に、この間までのように何もせずハルヒを観察する事が決定したと聞いて
俺は安心して、授業中に眠った。
『イビキがうるさい!』とハルヒに殴り起こされたが。

放課後になって 一目散に部室に行った。この時間なら俺が一番乗りだろう。
一体俺はいつからこの部活が楽しみになったんだ?そんなつもりは全く無いのだが。

『ガチャッ』ドアを開けた。

部室の中には予想に反して先客がいた。

喜「こんにちは、キョン君」

しかも予想外な。

『バタン』

キョ「どうも。そうでした、今回の事ありがとうございました。おかげでお尋ね者から開放されました」

喜「いえ、お礼なんていいです。むしろボクがお礼をしたくて来たんですから」

キョ「お礼ですか?何の」

喜「ボクの事、素敵な女の子だって言ってくれました。 とても嬉しかったんです」

恥ずかしい話だ。

喜「お礼といえば、やっぱり『これ』ですよね」

ふんわりと 俺に近づいて来て。

喜「んっ」『ガチャッ』

!?キスされた。唇がとてもやわらかい。

喜「ふふふっボクの 初キスです。良かったですか?それじゃあお礼も済んだので帰りますね。
あと『がんばって』下さいね」

タタタタッ。・・・ん?『がんばって』?何を?
しかしやわらかかった。口を指でなぞってみたりする。

?「何をしている・・・」

ぞくっ!?

背中に冷たいものが走った。そっそういえば、ドアが開く音を聞いたような聞かないような。

ぎこちなく首を動かして後ろを見た。

『バタン』

長「今、何をしていた・・・」

えぇ〜と長門さん?なんでそんなに怒っていらっしゃるのでしょう?明らかにいつもと顔が違いますよ?
オーラが見えます、オーラが。背中に文字が具現化しそうです。何か殺されかねないので、いいわけを一つ。
別に悪い事してないが・・・あれ?あの長門さん、体が動かせないのですが、一体何しました?

長「大丈夫、死人に口なし」

一体何でそんな言葉覚えました?えっ・・・あの、ちょっと待って!?
たった助けて・・・助けて下さーい喜緑さーーん!!



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